TOKYO

何かのきっかけで、止まっていた時計が動きだすような経験ってあると思う。

東京を離れて20年以上経って、仕事で行く機会はあっても、敗北感のようなものがつきまとい封印している部分はあった。東京はもういい、なんて思っていたかもしれない。

ところが、娘が上京し、私がかつて住んでいた沿線上の隣の駅に住むことになり、いっしょに東京という街を歩いているうちに、私の中の東京が変わり始めた。それは、まるで止まっていた時計が動き始めたような感覚だった。

 若者の真っ直ぐさと、瑞々しい感性を通して追体験すると、

へえ、そんな面があるの、と私が自身の東京をたどり始める。

東京ってこうだ、という決めつけがない方がずっと楽しい。

 

20代を過ごした東京はきびしかった。好きなこと、やりたいことにとことん向き合うのが辛かった。

東京で30年暮らす友人がいる。ライターが生業だ。

マスコミに取り上げられることも増えて、そのたびに「すごいですね」と言われてもビジネスとして成功しきれていない自分に情けなさがふくらんでしまう、と言っていたのを聞いて、

ううん、でも、好きなこと、やりたいことに向き合い続けているのはやっぱりすごいよ、その「すごい」だよ、と思う。

 彼女と最近またやり取りするようになって、私もまた文章を書いてみたいと思うようになった。

「書く人になると思ってた」と言われるけど、

私は好きすぎて乗り越えられなかったの。

そして今、止まっていた時計が動きだすように、書きたい気持ちが自然に私の中にある。

 

 

 

 昔は冷たいなあ、と思ったけど、

今はやさしい街に感じます。