失恋記念日
オープンしてからどのくらい経つんですか?
ときかれると、
2022年6月のほしの市に(店を)開けたので〇ケ月です、と答えてきた。
それ以前にも、会社を辞めてから業務委託のような形態で仕事はしていたので、自分の中ではひとりのスタートは3月24日としている。開業届けを出した日。そして、娘が上京した日。
私は少し遅れて、二泊しながら身の回りの細かいものを買いそろえにいった。キッチン用品、掃除用品 etc...、買い物マラソンのような三日間はあっという間に過ぎて、私だけが浜松に帰る。その新幹線の中で、私は人目もはばからずに泣いた。たぶん、いちばんぴったりくるオノマトペは「ぽろぽろ」だ。大粒であることが自分でもわかる涙が次から次へと流れ出て、ここは泣かせてもらおうと、泣き止む努力もせずにひとしきり泣いた。
泣きながら感じていた胸の痛みは、いつか感じた痛みだった。なんだっけ、これ、としばらく考えてわかった。そう失恋の痛み。フラれたときの痛み。好きな人との楽しい時間はもう私のもとには訪れない、という現実と対峙している真っ最中の痛み。そして、二人の過ぎた日々への後悔の痛み
働いてきたので、いつも娘第一だったわけではない。そして最後は勝手にフラれて泣くなんて、私って間ぬけだ。
それから数か月、ひとりになった私は失恋の痛みから立ち直るのに必死だった。完全に吹っ切れるまでに数か月を要した。
周囲からは、娘さんいなくてさびしいでしょう?
とよく言われるけど、私はこう答える、
「一度フラれて、それから完全に立ち直ったので平気なんです」。
(さびしいけどね、でも第二章が始まったのヨ)と、心の中でつけ足す。
あの失恋記念日から一年経つよ。あなたが東京でひとりでがんばって居場所を作っていったように、組織を離れて私も少しは居場所ができたと思う。
いたいのいたいのとんでいけ、のてんぐちゃん。
これで、痛いところをトントンするといいらしい。私は自分のハートがあるあたりをトントンしていたよ。