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弁当の国

水曜午後、わたしはどきどきしながら新宿通りを歩いていた。

「ベントーランド」と題された写真展に向かっていた。

わたしの大切な友達、ライターの阿部直美と、ご主人の写真家、阿部了さんが20年以上続けてきた、“一般人の弁当の写真を撮る”というライフワークを見るために。それは、ANAの機内誌「翼の王国」のお弁当の時間や、NHK「サラメシ」のお弁当ハンターとしてたくさんの人に知られることになったけれど、ここまで来るのに道のりは平坦ではなかったはずだ。

ふつうの人のふつうの弁当。人の数だけ、それぞれの昼があり、写真をみるうちに、自分の中の弁当の記憶がよみがえってくる。今回は写真にキャプションもなく、何を想像するかは見るほうに委ねられていた。

このライフワークを支えてきたのは彼女の文章によるところも大きく、ぜひ「お弁当の時間」として書籍化されている二人の共著も多くの人に読んでほしい。

最終日に行ったので、写真展は15時まで。わたしは撤収を手伝う気満々だったのだが、それはプロがやってくれるとのこと。わたしたちは再会をよろこび合い、楽しい時間を過ごしたあと手を振って別れた。

人生は、もう会えない人に対して、

ああ、あれが最後だったなあ、と思うのがいちばん切ない。

50を過ぎた今、そうならないように、また会えますように、と全力で祈る。

そして、昨日のように、えいやッと新幹線に飛び乗るようなこともできる瞬発力を無くなさないようにしないと。

プロの仕事は早い